屋根の塗装を依頼したら、パミールだから塗装できないと言われました
パミールというのは、ニチハという会社がかつて製造していた屋根材の製品名で、お尋ねの通り、塗装ができません。パミール屋根の説明、できることを解説します。
その通り。塗装できません
ちょうど新築から10年目くらいの家で、塗装の見積もりをとったら、「お宅の屋根はパミールなので塗装はできません」と言われることがあります。
これは、その当時に使われていた屋根材「パミール」に欠陥があるためです。
パミールは広く流通していたので、建築業界では大問題になりましたし、塗装の業界でも知られた話です。
しかし、家を建てたほとんどの建築会社は、いずれ不具合が起こることがわかっていながらも、オーナーさんにこれを知らせなかったようです。
それで、10年目に塗装しようとして初めて知ったというお客様が続出しています。
塗装できない「パミール」とは?
パミールは、ニチハ株式会社が製造販売したスレートのブランド名。
この会社は今でもちゃんとありますし、当時も今も国内最大手の建材メーカーです。
- ・ニチハの製造した屋根材
- ・製造期間は1996年~2008年まで
昭和の終わり頃までは、屋根材には不燃性の高い石綿(アスベスト)がよく使われていました。
しかし、アスベストの健康被害が明らかになり、ノンアスベストの建材が求められるようになりました。そこで登場したのが、パミールです。
アスベストを使わない屋根材は歓迎され、これを使った家がたくさん建てられました。
不具合が発覚。数年でボロボロに
しかし、パミールには大きな欠陥がありました。
わずか数年で、層状に剥がれ、ひび割れや剥がれが多発。
写真のように、ミルフィーユ状に剥がれるのが、パミールの特徴です。
上から見ると一目瞭然ですが、オーナーさんは普段屋根に上ることなどありません。
なんだか汚れている?塗り直しの時期か?と考え始めるのは新築から10年後です。
剥離が進むと粉々になり、強い風が吹くと破片が飛んでいきます。
2019年には、世田谷区でパミールが飛散し、隣の家の窓ガラスを突き破るという事故も起きています。
我々の体感的には、1996年~2008年頃に建てた家のうち、10軒に1軒はパミールという割合です。かなり多い。全然、人ごとではないですよね。
建て売り住宅だと、屋根材はどの家も同じ素材が使われています。その一区画の家がすべてパミールで全滅、というケースもよく見ます。
ニチハは何とかしてくれないのか?
結論から言うと、ニチハは製造責任を認めていないし、10年経っていたら保証義務もありません。
その証拠に、パミールは製造停止にこそなりましたが、リコールされていません。
訴訟にもなっていますが、ニチハは「パミール専用であるラスパート釘のメッキ処理が甘く、錆が出たせいでスレートが傷んだ。釘を納入した下請け業者が悪い」という主旨の主張をしており、解決していません。
パミールを使った家が多すぎるので、苦しいニチハの気持ちも、わからなくはないですが……お客様が泣き寝入りという状況は辛いですね。
しかし、ニチハと交渉すれば解決金がもらえたり、葺き替え用の資材提供を受けられたり、カバー工法の段取りをしてくれたりと、助けてもらえる例もあります。
必ずしも全戸が対象ではないし、待っていてもニチハ、ハウスメーカーや工務店からは連絡はきません。家を建てた会社に依頼して、対応してくれなければ、個別に自分でニチハと交渉、という流れになります。
その際、高圧的にクレーム電話をしても現時点では意味がないので、あくまでも「上手に交渉」が肝心です。
塗れない素材なのに、塗っている業者があるので注意
ヒビや割れだらけのものを塗装しても、すぐ剥がれてしまうので意味がありません。
ですから、普通の業者はパミールは塗りませんし、ちゃんとお客様に説明します。
しかし、なんとパミールを塗ってる業者がいるんです。
建て売り住宅の、ある家から見積もりの依頼があります。
現地調査で屋根に上ると、「ああ、この区画は丸ごとパミールなんだ」とわかります。
建て売りは複数の家が、ほとんど同じタイミングで塗り直しの時期に入るので、覚えておくと次に別の家から依頼があった時に便利なんですよね。
その帰り道、ふと近くの家を見ると、どこかの業者が足場を組んでいて、屋根をペンキで塗っている。え!パミールなのに塗っちゃうの??とビックリしますが、こういう例はわりとあります。
塗るというよりも、薄めたペンキを染みこませているのです。
通常の施工はできないので、色を付けるだけ。
下から見ると塗り立てはきれいに色が付いています。
しかし、こんなことをしても2~3年でダメになるのでお金をドブに捨てているようなもの。スレートが剥がれてくるのですから、見た目も維持できません。
お客様に説明した上で、「それでもいいからやって」と言われて塗装している可能性もありますが、黙って塗ってしまう、ディスカウントして塗ってしまう、そもそも業者に知識がない、という例もあるので要注意。
家を建てたのが1996年~2008年の期間に該当するなら、塗装業者に伝えてパミールかどうか確認しましょう。
現地調査の際に写真を撮る業者が多いので、それを見せてもらうのもいいでしょう。
パミールはカバー工法がおすすめです
もし自宅の屋根がパミールだったら、塗装ではなく、葺き替えかカバー工法かの二択になります。
葺き替えは、今ある屋根材をすべて剥がして葺き直す方法。
カバー工法は、今ある屋根の上から別の屋根材をかぶせる方法です。
喜多建設では、葺き替えもできますが、カバー工法をおすすめしています。色々な意味でそっちの方が現実的だからです。
葺き替えは大量に廃棄物が出るので処分費がかかります。工期も長いですし、工費も高額です。
そして何より、パミールの葺き替えは作業中に出るゴミが飛び散ってしまうので、ご近所に迷惑をかける可能性があるためです。
自宅がパミールかどうかわからない、パミールだとわかったがどうしようか迷っているという方は、一度ご相談ください。
解決策をご提案いたします。
以上、木中がお答えしました!
このページに掲載するかどうかはお約束できませんが、お問合せには必ずお返事しております。
何でもお気軽にお問合せください。